雇用契約を電子化するメリットとは?導入のステップを解説
毎年の契約更新や、パート・アルバイトの採用が増える時期、バックオフィス(総務・人事)を悩ませるのが「雇用契約書」や「労働条件通知書」の作成・回収業務です。
書類の印刷、郵送、ハンコでの押印、回収後のファイリングなど、紙をベースとした管理には膨大な時間とコストがかかっています。
本記事では、社会保険労務士事務所のDX推進担当事務員の視点から、雇用契約の電子化(電子契約)がもたらす業務効率化のメリットと、スムーズな導入のステップについて分かりやすく解説します。
紙の契約書管理に追われるバックオフィスの限界
多くの中小企業において、入社手続きや契約更新の業務は今なお「紙とハンコ」が主流です。
しかし、従業員数が数十名規模になってきたり、入れ替わりの多いパート・アルバイトを多く雇用していたりする企業では、以下のような課題が深刻化しています。
終わりの見えない「郵送・回収」の手間
内定者や更新対象者に書類を郵送し、署名・捺印されたものを返送してもらうまでに1〜2週間かかることは珍しくありません。
なかなか返送されず、催促の連絡を入れる業務も担当者の精神的な負担になります。
不鮮明なハンコや記入漏れによる再作成
せっかく回収した書類も、住所の記載漏れやハンコの押し直しが必要な場合、再度同じ工程を繰り返さなければなりません。
「あの書類はどこ?」深刻な保管スペースと検索性の問題
過去の契約書や労働条件通知書は、法的な観点からも厳重に保管する必要があります。
しかし、鍵付きのキャビネットが書類で一杯になり、過去の契約内容を確認したいときに、該当のファイルを引っ張り出すだけで一苦労するというケースは後を絶ちません。
このような「紙を中心とした業務フロー」は、担当者の時間を奪うだけでなく、企業の成長スピードや採用の機会損失(内定辞退など)にも繋がるリスクを秘めています。
雇用契約の電子化で変わる「3つのメリット」
これらの課題を劇的に解決するのが、パソコンやスマートフォン上で契約を結ぶ「電子契約(労務管理クラウド等の活用)」です。導入によって、バックオフィスには次のような変化が生まれます。
1.手続きが最短即日で完結する
書類をクラウド上で作成し、相手にメールやSNSで送信するだけで完了します。
従業員はスマホから内容を確認して同意ボタンを押す(または電子署名する)だけなので、郵送にかかっていた往復の時間がゼロになり、最短即日で契約が締結できます。
2.コストの削減(印刷代・郵送代・印紙税)
紙の印刷代、封筒代、往復の切手代が不要になります。
さらに、書面の契約書では必要になる場合がある印紙税(※雇用契約書は原則非課税ですが、その他の契約書を兼ねている場合など)も、電子契約であれば一律で非課税となります。
3.管理の安全性が高まり、検索も一瞬に
締結されたデータはクラウド上に安全に保管されます。
「従業員名」や「契約日」で検索すれば、過去の契約書をいつでも数秒で見つけ出すことができます。紛失や誤廃棄のリスクも防げます。
電子化をスムーズに進めるための3ステップ
自社で雇用契約の電子化をスタートさせるための具体的な手順を解説します。
1.従業員(内定者)への説明と同意書の用意
まずは社内の従業員やこれから入社する内定者に対し、「業務効率化とペーパーレス化のため、契約手続きをスマートフォンやパソコンで行う形に移行します」と伝えます。
その上で、電子データでの交付を労働者本人が希望していることを確認するための「確認書」や「同意書」(書面、または事前のクラウドシステム上でのチェックボックスなど)を用意します。
2.利用するクラウドシステム(電子契約・労務管理)の選定
自社の規模や予算に合わせてシステムを選びます。
単に契約を結ぶだけの『電子契約システム』だけでなく、入社手続きや住所変更、マイナンバー(個人番号)の回収なども一元管理できる『労務管理クラウド』を選択すると、将来的なバックオフィスのDX化がさらに加速します。
ただし、マイナンバーを取り扱う際は法律に基づく厳格な安全管理措置が求められるため、十分なセキュリティ体制が整ったシステムを選ぶことが大切です。
3.運用ルールの社内共有とテスト運用
「誰がシステムで書類を作り、誰が承認して送信するか」という社内フローを決めます。
まずは少人数の契約更新や、特定の部署のパート採用などからテスト運用を始め、問題がなければ全体へ広げていくのが失敗しないコツです。
まとめ
雇用契約の電子化は、単なる「ペーパーレス化(エコ)」に留まりません。
バックオフィス担当者の単純作業を減らし、本来集中すべき「採用活動」や「従業員のエンゲージメント向上」といった、より生産性の高い業務に時間を使うための強力な一歩となります。
また雇用契約の電子化を実施する際には、電子帳簿保存法(E文書法)に基づく保存要件を満たす必要がありますが、主要な電子契約サービスはこれらの要件に対応しています。
企業側で複雑な設定を行う必要はなく、契約締結から保存・管理まで一連のプロセスを法令に準拠した形で運用できる点も、電子化の大きなメリットです。
「自社に合ったクラウドシステムが分からない」「法律に準拠した運用ルールを一緒に構築してほしい」とお悩みの経営者様・総務担当者様は、ぜひ一度、当事務所へお気軽にご相談ください。
実務に即したスムーズなDX化を、専門家の視点からしっかりとサポートさせていただきます。
