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給与明細の電子化をスムーズに進めるために、知っておきたい「従業員の同意」と手続きのポイント

概要

近年、ペーパーレス化やDX(デジタルトランスフォーメーション)の流れを受け、給与明細を紙から電子データ(PDFやWeb閲覧)へ切り替える企業が増えています。事務担当者としても、印刷・封入・郵送の手間が省ける大きなメリットがあります。

しかし、給与明細の電子化は会社が一方的に進められるものではありません。所得税法の定めに従い、「従業員個々の同意」を得ることが法的な要件となっています。本記事では、なぜ同意が必要なのか、どのような形式で進めるべきなのかを分かりやすく解説します。

給与明細を電子化するにあたっての注意点

給与明細の交付は、所得税法に関連する義務ですが、原則として「書面(紙)」での交付が想定されてきました。
これを電子データに置き換える場合、以下の点に注意しなければなりません。

勝手な電子化は認められない

給与明細及び源泉徴収票については、原則として従業員の承諾が必要ですが、所得税法の特例として、事前に「期限までに異議の申立てがない場合は承諾したものとみなす」旨を具体的に通知し、期限内に労働者からの異議がなかった場合には、同意を得たものとして扱うことができます。ただし、その後でも従業員から書面交付の請求があった際は、速やかに紙で発行する義務があります。
つまり、会社が「明日からメールで送ります」と告知するだけでは不十分ということです。

「閲覧できない」リスクへの配慮

ITツールに不慣れな従業員や、個人のスマートフォン・PCを持っていない従業員への対応を無視すると、後のトラブルや不信感につながります。

セキュリティとプライバシー

給与情報は極めて重要な個人情報です。
誤送信や漏洩が起きた際のリスクを考慮した運用設計が求められます。

給与明細を電子化する際に必要な対応について

1. 法的な根拠と「同意」の必須性

給与明細の電子交付については、所得税法第231条および関連する施行令において、「受取人の承諾を得た場合」に限り、電磁的方法による提供が認められると規定されています。

出典:国税庁「給与等につき提供される給与所得の源泉徴収票等の電磁的方法による提供承諾手続」
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/hotei/tebiki2017/PDF/15.pdf

2. 同意書の形式と取得方法

同意を得る際には、会社側が提供するシステムが以下の「法令上の技術的基準」を満たしていることを確認し、従業員にもその旨を説明しておく必要があります。

  • 出力可能性: 従業員が自身の端末等から、内容を紙に印刷できること。
  • 閲覧可能性: 従業員がいつでも自分自身のデータを閲覧できる状態にあること。
  • 記録の確実性: 従業員のメールボックス等にデータが記録されるか、または専用サイト上で適切な本人認証を経て閲覧できること。

また、従業員から得た同意の記録(承諾ボタンのログや承諾書)は、後日の調査やトラブルに備え、給与所得の源泉徴収票等の保存期間に合わせ、7年間保存しておくのが実務上最も安全です。

【給与明細電子化のチェックリスト】

  • [  ] 通知: 電子化の目的と開始時期を伝えたか
  • [  ] 同意: 個々の承諾を得たか(または「みなし同意」の手続きを踏んだか)
  • [  ] 環境: 従業員が印刷・閲覧できる環境にあるか
  • [  ] 例外: 同意しない人への「紙での交付」ルートを確保したか
3. 同意が得られない・撤回を希望する従業員への対応

全員一律で電子化を強制することはできません。
スマホを持っていない、あるいは操作が困難な従業員から同意が得られない場合は、引き続き「紙での交付」を継続する必要があります。
また、一度電子化に同意した従業員から「やはり紙の明細に戻してほしい」と申し出があった場合、会社はそれに応じる法的義務があります。

実務上は、こうした「紙への切り替えフロー」もあらかじめ準備しておくことが重要です。

4.実務アドバイス

電子化を導入する際は、いきなり同意書を配るのではなく、「なぜ導入するのか(紛失防止、過去分の閲覧の容易さなど)」という従業員側のメリットを強調した案内を先行して行うと、同意がスムーズに得られやすくなります。
また、通知文には期限と「無回答は同意とみなす」旨を明記するよう運用設計を検討してください。

まとめ

給与明細の電子化は、コスト削減だけでなく、従業員にとっても「いつでもどこでも確認できる」という利便性向上につながる施策です。

しかし、その土台となるのは「法令の遵守」と「従業員の理解」です。まずは適切な同意手続きを行い、必要に応じて紙の運用も残すといった柔軟な姿勢で取り組んでいきましょう。

具体的な手続きや、導入に適したシステムの選定については、ぜひ当事務所までお気軽にご相談ください。

執筆者について

DX推進担当

お客様のDX推進を支援し、手続業務の効率化・自動化を中心に業務改善を行っています。

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