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同一労働同一賃金ガイドライン見直し案を厚労省が提示

最高裁判決の反映と「無期フルタイム労働者」の新たな整理が焦点

 厚生労働省は、同一労働同一賃金ガイドラインの見直しに向けた論点整理を行い、2025年11月21日の労働政策審議会で見直し案を提示しました。今回の案では、平成30年以降の主要な最高裁判決(ハマキョウレックス、長澤運輸、メトロコマース、日本郵便など)で示された「待遇の性質・目的」に関する判断が体系的に反映されている点が大きな特徴です。

最高裁判決を踏まえた待遇項目の明確化

見直し案では、以下の待遇について最高裁の判断枠組みをガイドラインに明記する方針です。

  • 賞与
  • 退職手当
  • 無事故手当
  • 家族手当
  • 住宅手当
  • 福利厚生施設の利用条件
  • 病気休職中の有給保障
  • 夏季・冬季休暇
  • 褒賞

特に、退職手当・無事故手当・住宅手当・家族手当・季節休暇・褒賞は現行ガイドラインに明確な記載がなく、企業実務で判断が分かれやすい領域でした。
今後は、各制度の「性質・目的」に即した給付設計が求められます。

【例】家族手当のうち「配偶者手当」は、働き方に中立的な制度となるよう見直しを促す方向性が示されています。

正社員待遇の引下げによる格差解消は「望ましくない」と明確化

従来から示されていた方針をさらに明確化し、
「通常の労働者(正社員)の待遇を引き下げることによる格差解消は、法の目的に照らして望ましい対応とはいえない」
と明記される見込みです。
企業に対し、待遇の底上げによる格差是正を促す姿勢がより明確になりました。

労働者に対する待遇に関する説明義務の改善

待遇差についての使用者の説明義務について実効性が上がっていないことから、労働者の雇入れ時の労働条件明示事項のなかに待遇差の説明を求めることができる旨が追加される予定です。

無期雇用フルタイム労働者の位置づけを新たに整理

今回の見直し案のポイントの一つが、
「無期雇用フルタイム労働者(多様な正社員を含む)」の明確な位置づけです。
これまでガイドラインは「正社員」vs「パート・有期労働者」の二分法が中心で、無期雇用フルタイム労働者層の扱いが曖昧でした。
見直し案では、以下のように整理されます。

見直し案のポイント

  • 無期雇用フルタイム労働者を、正社員とパート・有期労働者の中間層として位置づけ
  • 待遇差判断において「無期雇用であること」「フルタイムであること」を考慮要素として明確化
  • 企業に対し、より合理的・説明可能な待遇設計を求める方向性を提示

これにより企業は、無期雇用フルタイム労働者の待遇を検討する際に「正社員と同じ時間働いている」「無期契約である」という点を踏まえた説明責任が求められるようになります。特に、無期転換後の労働条件は、正社員との均衡を考慮し、説明可能な状態にすることが求められます。これは、無期転換者を「非正規扱い」のままにすることが、今後ますます説明困難になることを意味します。

今後の企業実務への影響

今回の見直し案は、企業の待遇設計における判断基準をより具体化するもので、特に以下の影響が想定されます。

  • 手当、休暇制度等の性質・目的の再整理
  • 正社員待遇の引き下げによる格差解消の抑制
  • 労使間での説明責任の強化
  • 無期雇用フルタイム労働者の待遇体系の見直し

企業としては、早期に自社制度の棚卸しと待遇差の根拠整理を進めることが重要です。

執筆者について

代表 水野 昌徳

社会保険労務士事務所勤務を経て独立。2009年より現職。
中小企業から上場企業まで、あらゆる規模・業種の労務管理を経験。
労働問題や行政への対応などを得意としています。
2014年度より、大同大学総合情報学科経営情報専攻において
労働法の非常勤講師を務め、学生の教育にも力を入れています。

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